東北大学・宮城教育大学 キャンパスレポート
2013-09-05 | キャンパスレポート

東北大学・宮城教育大学 キャンパスレポート

浜田 肇(数学科)

動員数5万人で全国3位(1位は日本大学、2位は早稲田大学、4位は明治大学)という東北大学のオープンキャンパスに、高1生徒2名と一緒に参加しました。

「実学主義」「就職に強い」という噂だけしか知らず、遠いところにあるとばかり考えていた私には、驚きと発見の連続でした。

東北大学(工学部・理学部・薬学部)は仙台駅より通常はバスで30分程度の青葉山に位置します。東京-仙台間は新幹線で1時間半ですので日帰りも十分可能で、実際に7月30日は生徒2名が日帰りで参加しました。

何より驚いたのは動員数5万人の実態と、大学をあげたオープンキャンパスへの力の入れようです。

当日は仙台駅よりタクシーを利用しましたが、裏道を通ったにもかかわらず大渋滞が発生していて、1時間以上を要しました。遠回りを疑ってしまうほどでしたが、大学で続々と到着する大型バスを見て、納得しました。東北6県から高校生が学校単位で見学に訪れているのです。仙台駅前が高校生でごった返していたのも思い出されました。

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大学で次に目についたのは、学科ごとに揃いのオリジナルTシャツを着た学生たちです。高校生を見つけては、自分たちの発表ブースに引っ張り込み、熱心に説明していました。この姿勢は教授クラスにおいても例外ではなく、看板研究者が30分~50分のミニ講義(模擬講義、体験講義、公開講義、オープン講義等呼び名が統一されないのも国立大学らしい?)に惜しげもなく登壇し、その数は大学全体で57にも上るのです。この期間の大学の研究・教育活動は一切停止してしまうほどの熱の入れようには、単に入学者確保以上のものがあることに、あとになってから気づきました。つまり、研究は得てして狭い世界の中でのみ、考え方を煮詰めていく作業になりがちです。関連する分野の研究者には内容を伝えられるけれど、それが社会全体に対してどういう役割を持つのかという点は問われないケースもあります。年に一度の開かれた場で、学生自身が高校生を相手にすることで、自らがたどってきた道を振り返り、学問そのものがもつ面白さを確認するまたとない機会となっているのです。教授たちも、「近頃の学生は勉強しなくなった」などと嘆くばかりではなく、「全くの素人である高校生にいかに面白さを伝えるか」を、社会に対して発表する場として与えられていることになるのです。実学主義を掲げる大学が、アウトプット能力をも高めるイベントとして積極的に活用していることが窺えました。「発明工房」と題された小学生向けのイベント会場も用意され、学問が、研究者だけのものでないことを大学一丸となって確認しようとしていることが随所に感じられました。

参加した生徒の感想を紹介します。

堀江君:

「時間に余裕のある1年生のうちに地方大学を見学しておきたかったので参加を決意しました。工学部という名前だけからはなかなかイメージができませんでしたが、大学生がフレンドリーに話しかけてくれていろいろな情報を得ることができました。僕自身は土木工学科に最も興味を持ちました。全国各地から高校生が見学に来ていて、東北大学の規模の大きさに驚きました。自然もとても多く、充実した大学生活を送るのにとてもいい環境だと思いました。」

古関君:

「薬学部に興味があり、参加しました。レベルがとても高いことは、よく知っていたけれど、それに見合うだけの魅力があることを感じました。特にミニ講義では、薬が効く仕組みを説明してもらい、興味が深まりました。同じ4年間を過ごすならこういう環境に身を置けるよう、これから頑張って勉強したいと思いました。同じ高校生たちが積極的に質問する姿も見ることができ、学ぶことの多い1日になりました。」

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たった1日の見学でしたが、2人の目つきや言葉遣いまで、積極性が明らかに増した充実のイベントとなりました。

*三浦英夫教授(機械知能・航空工学科学科長) ミニ講義挨拶

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・敷地内の一番目立つところに展示してある発電所のタービンは、火力発電所内のガスタービン国産技術100%の第1号で、解体の際に寄贈された。

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・世界大学ランキングは180位であるが、工学部としては20位。当然日本では1位。

・特許出願件数日本1位

*吉田和哉教授(機械知能・航空工学科)「宇宙を探査するロボットを作っています」

・『宇宙兄弟』というコミックに登場するもろもろのエピソードのかなりの部分は実際に吉田研究室における取材をもとにしたものであるとのこと。

・ネバダ州の砂漠で毎年ロケット打ち上げを、個人で行っている人がいるので共同して実験をおこなっている。

・実際に砂丘にロボットを持ち出して、歩行の動作実験をする。

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*堀切川一男教授(機械知能・航空工学科)「ドクターホッキーのすべらない話」

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・摩擦学におけるチャートを考案し、世界的な第一人者。

・摩擦に関係することは、ボブスレー日本代表チーム強化のための研究、イチローのスパイク開発、パンタグラフの開発、潤滑油の要らない金属接触面の開発など。

・摩擦とは別の面では、あらゆる車椅子に装着可能な電動化ユニット開発、問題解決チャートの提案、福島観光大使など。

・最も時間を割いていたのは、「恋愛マップ」なる人間関係に関するパス図。

・特許を量産している研究者。

*小菅一弘教授(機械知能・航空工学科)「ロボットが拓く未来」

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・左右の手や、複数でものを運ぶなど「協調・協働」はロボットにとって難しかった。これをクリアすることで、乗り捨てた車のタイヤを持ち上げ、駐車スペースに格納するロボットの開発に成功した。

・協調・協働をさらに発展させ、人に合わせてダンスを踊るロボットを開発した。これは、肢体不自由者の歩行を補助するロボットにつながり、脚に障碍を持つ人が歩けるようになった例もある。

*岡崎直観准教授(情報知能システム総合学科・)「言葉を操る賢いコンピュータはどこまで実現したか」

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・「友達と仙台に行きました」「盛岡と仙台に行きました」の「と」は全く意味が違う。これをコンピュータで翻訳するには大きな困難が伴う。ネット上の膨大な使用パターンを分析することで、こうした区別の制度が大幅に上がっている。

・情報の信憑性をどう確保するかに関する研究について。ツイッター上でデマの発生から、事実が認識されるまでの、デマと事実の双方の発言数の推移を分析し、これらに一般的なパターンがあることが確認された。さらに踏み込んで、デマを自動的に発見するプログラムの開発も成功した。

・選挙における候補者の話題と、投票者の話題のギャップの解析にも成功した。

*斉木功准教授(建築・社会環境工学科)「橋の構造に隠された秘密」

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・同じ原材料を用いても形の違いによって、強度が大きく違うことがわかっている。

・たわみに耐えることができる設計と、そもそもたわまないようにする設計を使い分けることが重要である。

これからオープンキャンパスに出かける高校生にぜひお伝えしたいことがあります。
ミニ講義をぜひ体験してください!!
堀切川教授は「涙なくしては語れない」と所々で冗談交じりに話していました。
実際に研究活動というのは失敗や、前進できないことの連続です。
それでも、目標が描けて、ときどきは大きくうまくいく、だからやめられないのです。
大学進学の先にある就職が気になって、大学選び・学部選びに迷うこともあるでしょう。

しかし、より重要なのは大学生活・研究生活を充実させることではないでしょうか。
たくさんの失敗を、思い切り没頭して生活することの大切さを、今回のオープンキャンパスで痛感しました。
その結果が、就職率100%、求人倍率5倍という圧倒的な結果につながっていると確認できて改めて勇気をもらえました。

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全学共通利用のスパコン棟内部。

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大震災で施設がかなり破損したとのことで、随所にクレーンが見られる。

宮城教育大学

どの施設もコンパクトな大学で、高校のような雰囲気でした。行き交う学生たちもほとんどが顔見知りのようで、本校卒業生の大井君に大学を案内してもらっている間も、すれ違う学生の大半と言葉を交わしていました。

彼は、「ほぼ全員が教職を目指すという共通意識も、この落ち着いた雰囲気の理由です」と話してくれました。東北大学に隣接しており、聴講や単位の振り替えや、講義担当教官の交流も盛んなようです。卒業単位満了が見えてきたら東北大学の講義ばかり、という学生もいるようです。

「出願直前までよく知らなかった大学ですが、入学して本当に良かったと思います。浪人を覚悟していたときにこの大学を見つけてくれた高校の先生には感謝しています。後輩たちにも最後までがんばりきってほしいと思います。」とメッセージをもらいました。

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昼休みにはほとんどすべての学生が学食に集まる。グループで行動する学生が目立つ。

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学内で最大の講義室(200名弱収容)。コンパクトがゆえに、学生同士も濃密なつながりを形成する。

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充実のキャンパスライフを送る本校卒業生大井君と。

 

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