シンポジウム「高校の学びは就活にどう生きるか」~まとめ・アンケート~
2012-09-07 | 進路系行事

7月10日に行われたシンポジウム「高校の学びは就活にどう生きるか」についてのまとめです。

企画の背景
まずこの企画を実施しようと考えたのは、3年前の卒業生の「成人を祝う会」という同窓会が中心となって行う行事のプレ・イベントを行いたいと思ったからです。「成人を祝う会」は、卒業生全員が成人を迎えて初めて母校の先生方とお酒を酌み交わし、同じ学舎にいた学生同士が旧交を温めるという企画で、もう何年も続いている恒例行事です。そしてこの機会を利用して、少し大げさな言い方をすれば進路指導部が「卒後教育」の一環として就職活動にまつわる情報交換の場を提供できないだろうかと考えたのです。それならば卒業生の保護者にも声をかけて、息子の就活について一緒に考えてもらおうということで後援会にも協力を仰ぎ、メールなどで声をかけていただき、企画の実現にこぎつけました。

 

高2総合学習とのカップリング
折しも、高校2年生の総合学習では「大学説明会」と銘打って、早稲田大学や明治大学など本校でも志願者の多い大学を多数お招きして、合同説明会を実施することになっていたのです。そこには大学のブースだけではなく「マネー相談」など保護者向けの企画も用意しており、来場してくださった高2の保護者の方に大学生の就活事情と高校の学びの接点についてのパネルディスカッションを聞いてもらいたいと考えたのです。そしてこの「大学説明会」と「パネルディスカッション」を合わせて「シンポジウム」という形にすることにしました。

 

ストの石渡嶺司さんについて
パネルディスカッションのゲストとしてお呼びした石渡嶺司さんとは、著作の感想をめぐってTwitterでやりとりしたことからお付き合いをさせていただいているのですが、今回の企画をお願いしたところ快諾してくださり、事前の打ち合わせにも来校いただき、話の展開をシミュレーションしました。大学ジャーナリストとしてだけでなく就職活動の専門家としてもメディアを賑わしている石渡さんは学生に対して非常に愛情深い方で、本校のパネリストに対しても時に厳しく時に優しく適切なアドバイスを送ってくれました。

卒業生のパネリスト
 チューターとしても3年目を迎えた上智大学理工学部の秋山君、立教大学経済学部の羽田君は、共に現在就職活動を始めたばかりの大学3年生です。また、1年浪人して早稲田大学に入学した猪久保君は2年生から見た就職活動という視をパネルディスカッションに投じてほしいと考えました。

パネリストの教員について
本校英語科主任でパネリストを担当した小塩は、3年前の卒業生の国公立クラスを受け持ち、今回の3名のパネリストの担任でもありました。そして現在は高校2年の国公立クラスの担任をしており、まさに今回対象とした高2保護者と卒業生保護者の架け橋になる存在でした。また本校におけるここ数年の進路指導改革の立役者でもあり、そうした視点からも高校の学びと就活のあり方を横断的に見渡せる存在としてパネリストになってもらいました。

 

パネルディスカッション
〈就職活動の現在〉
このパートでは石渡さんに現在の就職活動事情について、基礎的なところから解説をしてもらいました。活動の開始時期、企業・業界研究の方法、大学の学部・学科による有利不利など、多岐にわたる視点から、現在の就職活動のあり方を俯瞰してもらいました。1980年代からの就職率の変化や大学進学率の推移などを追いながらの解説は、やはり私ども教員や保護者方々の経験してきた時代の就職活動の事情とは大きく異なり、非常に参考になりました。

〈就活を目前に控えた大学生の状況〉
就活目前というよりはすでにスタートしているという感じでしたが、理系の秋山君と文系の羽田君がそれぞれ自分の状況を語ってくれました。羽田君はインターンシップを就職活動の中の選択肢の一つとして捉え、企業への多くの入り口を模索しているとのこと、ただし厳しい現実を先輩からも聞いており、甘い認識は持っていないと語りました。秋山君は、企業の規模やブランドよりも自分の力が発揮される場所を探したいと考えており、大学院進学も視野に入れながら就職活動を始めたところということでした。
 

 

 

 

〈大学に入ってから就活まで〉


大学2年生の猪久保君にとっては元同級生の話はとても刺激的だったようです。また就職活動といってもまだ現実感がなく、それでも漠然と将来に向けて自分の可能性を探っているところだといいます。所属している「文化構想学部」という変わった学部が何をやるところなのかという説明の仕方や、タップダンスのサークル活動がどんな形で役立つのかなどを就職活動の現場でどういえばいいのか、など話題は面接を想定した具体的なところにも及びました。

 

 

 

〈高校時代にどのような力を身につけておくべきか〉
高校時代アメリカンフットボール部に所属していた羽田君は部活動に一生懸命取り組むことの重要さを述べていました。先輩後輩との関わりなど、多くのことが今でも役に立っているといいます。秋山君は、大学では野球のサークルに所属していますが、高校時代には合氣道で日本一にもなった経験を持ち、様々な分野に興味を持って取り組むことの尊さを語ってくれました。また、猪久保君は学生時代ずっと学級委員としてリーダーシップを発揮してきた経験を生かしていきたいと話してくれました。

 

担任だった小塩先生は彼らの話を聴きながら3名のパネリストの高校時代からの高い能力を認めつつも、その根底には、在校中に彼らが「遅刻をしない」「学級日誌を丁寧に書く」などという学校生活におけるごく当たり前のことを当たり前にできる力が備わっており、それが現在にも繋がっているのではないかと分析します。つまり3名のパネリストを見ても、日常の生活習慣を高いレベルで行えることが重要であり、それは校訓である「行学二道」の実践という形で確実に実っているのだということを話してくれました。

 

 

 

石渡さんのまとめ〉
就職活動に必要なのは何か特別な力ということではなく、「周囲の大人と話ができるか」「普通に文章が書けるか(エントリーシートのため)」「恋人と楽しい時を過ごせるか」などといった日常のふるまいそのものに表れると話してくれました。また、「インターンに落ちたからといって本採用でも落ちるとは限らない」、「ビジネス週刊誌などから少しずつ業界研究を始めればいい」、といった身近で着実な考え方を説いていたように思います。とりわけマスコミの情報に踊らされることなくしっかり足元を見据えて、一見無駄に思えるようなことも一生懸命取り組んでみれば、後から振り返ってみれば自分の力になっていたり非常に役立っていたりすることも多いはず、ということを力説していたように思います。

~シンポジウムを終えて~
会場となった音楽室には石渡さんが残ってくれたので、多くの保護者の方々が質問の列をなしていました。また、パネリストの大学生にも多くの在校生の保護者の方々が、「高校時代にどんなことをやっておけばいいですか」などという質問が数多く寄せられたようです。パネラーの羽田君によるパネルディスカッションの報告も併せてご覧下さい。
ご参加・ご協力ありがとうございました。

 

 

アンケート結果
シンポジウム「高校の学びは就活にどう生きるのか」アンケート

回答者数:27人

*全項目複数回答可

1 この企画を何で知りましたか

保護者会 22人 学校HP 1人 進路指導部HP 1人 知人から 5人 その他 2人

2 本日のシンポジウムはいかがでしたか。

大変満足 8人 満足 15人 普通 3人 やや不満 0人 不満 0人

・現実に沿った内容だった

 

・大変興味深い内容で楽しく聞かせていただきました。

・高校時代の大切な事、就職の現状などよく分かった。

・「具体的にどのような学びをすべきなのか」という話ももう少し聞きたかった。

・相談者の相談内容がわかりにくかった。

3 本日のシンポジウムの中で参考になった部分はどのテーマでしたか。

「就職活動の現在」 11人

「就活を目前に控えた大学生の状況」 12人

「大学に入ってから就活まで」10人

「高校時代にどのような力を身に付けておくべきか」 15人

以下は自由記述

・部活動の継続の大切さ。

・就職活動の手段は変遷していますが、企業が求める人材は変わっていないと思います。流行(推薦入試組は駄目など)に左右されないことが大切だとの思いを、本日強く持ちました。

・猪久保君の話はテーマに沿っていたし保護者受けも良かったように思います。

・現状の就活状況の厳しさを感じました。

・現役合格生だけでなく1浪生を混ぜていただいたことで話題が広刈りを持った気がして良かった。ただ国公立クラスだけでなく一般クラスの卒業生も参加されていたらさらに深みが増したのではと思います。

・  まずは大学受験を考える息子なので、学部による就活の違い等少し知ることができ、勉強になりました。

・  本人とじっくり会話を持つことができていないので他の卒業生の様子を聞くことができて、大変良かった。

・  大変参考になった

・  就活の現在の状況を聞く機会があり、参考になりました

・  大学生の生身の考えが聞けて良かった

・  サマーインターンシップなどの言葉からわかりませんでしたので、とても参考になりました。大学3年の長男にTELしたいと思います。不安な気持ちに光りをいただきました。ありがとうございました。

・  大変ためになりました。ありがとうございました。先輩方の前向きな姿勢、立派な発言に感動しました。後に続いていけるよう、子供をサポートしていきたいとおもいます。不安な時代ですが、良い情報をいただいてありがたかったです。

・  参考にさせていただける内容と思いました。ありがとうございました。

・  卒業生のスピーチが大変参考になりました。

・  卒業生の大学生活が詳しく聞かせていただき、楽しそうな反面、厳しい状況下で就活の不安など大変な時代だと思いました。

・  現役の大学生の声を聞けて大変参考になりました。子供たちにもぜひ聞かせたい内容でした。

・  大学生の生の声と状況と、大学ジャーナリストの現状が聞けて大変参考になりました

・  全て満足いくものでした。参加させていただいて良かったです。ありがとうございました。

・  現役合格生だけでなく、一浪生を混ぜて行った事で話題が広がりを持った気がしてよかった。ただAクラス(選抜)だけでなく一般クラスの卒業生も参加されたら、さらに深みがあったのでは・・と感じた。

・  佼成学園で子どもが6年間学べて良かったと再度思いました。

・  就活の現状を少しわかることができて良かったです。就活が終わった人の話もあればよかったと思います。

・  いろいろな立場の方のお話が聞けて良かったです。

・  高校生活から大学、就活の話、色々参考になることを聞かせていただき良かったです。日々の生活をきちんとすることが大切だと改めてわかりました。ありがとうございました。

・  チューターの皆さんがしっかり自分の考えや意見が発表できている姿勢に感心しました。それぞれの立場では話してくれて参考になりました。石渡氏の話、まとめ方もとてもコンパクトで分かりやすく話して下さり、親としてどうあるべきか、どう関わるかを教えていただき勉強になりました。ありがとうございました。現役で進学されたチューターの皆さんは、とても自信に満ちていて、高校時代部活で培ったものが生きていると感じましたし、猪久保さんのように浪人という苦い体験がとても今後に生きている姿(考え方)を拝見して、素晴らしいと感動しました。又、石渡氏の話で全て無駄なことはなく、必要なことと感じました。

・  いろいろなタイプの先輩のお話を聞けて、自分の息子の生活に考え方の参考に出来た充実した時間でした。

・  大学受験の関連するイベントを聞いてみたい。

・  大学2年生・3年生の状況がよく分かりました。就活(社会人)の為にも高校時代の過ごし方の重要性が認識された。

・  佼成学園で育った先輩達が立派に成長されていて頼もしく感じました。講師の先生の歯に衣着せぬ言葉の数にも良かったです。

・  大学や学部を分けて、何回かに渡って実施した方が保護者のニーズに応えられるかも知れません。

羽田チューターからの報告

1.保護者からの質問や相談とそれに対する自分の回答(個人の特定を避けるため一般的な形に改めています)

「どのように部活と勉強を両立したのか?」

→生活リズムを変えた。部活で家に帰るのが遅くなったため、家に帰ったらすぐに夕食と入浴を済ませ、就寝した。朝は04:00に起きて勉強することを習慣にした。また、積極的に学校の講習には参加した。授業は必ず寝ないでしっかり受けた。その場で吸収していくという意気込みが必要である。

 「子供のモチベーションが上がらない」

→自分は、「計画」によってモチベーションを高めた。具体的には、長期的な目標、中期的な目標、短期的な目標を設定する。例えばまず、「―大学に合格する」という目標を設定すると仮定する。これは長期的目標である。次に中期的な目標として、「―模試で偏差値―以上を取る」というノルマを設定する。すると、最後に短期的な目標として、この一ヶ月でこの参考書を仕上げなくてはならないなどと決まり、おのずと一週間、一日の予定が決まる。すると、予定を狂わすわけにはいかないという気持ちから、モチベーションは上がっていった。

 2.パネルディスカッションを通してみての感想

大学ジャーナリストの石渡さんをお招きして、お話しした結果、自分の就職活動に対する価値観が変わった。まずインターンについては企業を知る一つの選択肢として使うべきだと言うこと、就職活動はあくまでキャリアの入り口であるという事が分かった。

 3.高校の学びがどのように就職活動につながっていくのか

高校の学びは、大きく分けて2つあると思う。勉強面と生活面である。勉強面はもちろん就職活動をする際に学歴となって現れてくるという意味で部分的にだが重要になってくる。しかし、高校生活の中で、生活面こそとても重要な要素の一つではないかと思う。就職活動の中で、特に最後の面接で、「この人と働きたい」と思ってもらえるかが勝負だという。もちろん学歴も重要で、一定のものがないと勉強に対して真面目な姿勢で取り組んでこなかったと見なされる可能性がある。しかし、人間性はそれ以上に、一生涯を通してとても大切なもので、これは中学・高校の間に基本的に形成されていくと思う。自分の場合は、アメリカンフットボール部に所属していて、そこでチームメイトと築き上げてきた人間関係が自分の人格の形成に大きく寄与していると思う。部活動は、そのスポーツに対しての技術が身につくということは二の次で、人間的な成長こそが最も大切な要素の一つではないかと思う。社会に出てから求められるのは、「チームで動くこと」である。中高の部活動はその基本的な能力を身につける上でもとても学生にとって大切な経験ではないか。

 

 

 

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