平成26年6月7日
進路指導部 浜田肇・秋山哲二
■初めて見るものばかりの見学
東京大学の大学院である生産技術研究所・先端技術研究所の合同研究室公開イベント「駒場リサーチキャンパス公開」が6月6日(金)・7日(土)におこなわれました。本校高2生4名、高1生8名が7日の授業後に参加してきました。当日は朝から大雨警報・注意報が都内にも発令され、本校での授業も1・2校時が休校になり、開催・参加が危ぶまれる中、生徒たちも大変な思いをして、駒場リサーチキャンパスにたどり着きました。
最初に見学したのは、奈良県飛鳥村で導入されているという、「歴史的建造物・人物再現バス」です。特製ヘルメット(ヘッドシステム)をかぶってバスに乗ると、バスについている全方位カメラと、ヘルメットが連動し、周囲の景色がリアルタイムで見えるようになっています。のみならず、本当は現存しない建造物や、人物の動きの再現CG映像が、現在の風景に重ねて見えるようにできています。ヘルメットに内蔵されている方位システムと連動して、顔を向けた方向の景色+CGが見られるのです。運良く体験できた生徒は、最新の研究の洗礼を受け、驚きを隠せない様子でした。
次に見学したのは、深さ8mのプールと、海底探査ロボット「トリトン2号」の実演です。「海底のグーグルマップを作るプロジェクト」の一環とのことで、昨今話題のレアメタル、メタンハイドレートなどの探索を目的としているとのことです。水中にある間は、外部からの通信が遮断されますが、搭載したプログラムにしたがって、海底の写真を順々に撮って移動します。のみならず、撮った写真を自信で合成し、データに不十分な箇所が見つかった場合、改めて不足分を補うために追加写真を撮りに移動します。実演では高さ50cmのポリタンクも見事に、写真に収め、水底の地形を探査する精度の高さを示しました。
(左:「歴史的建造物・人物再現バス」と体験した生徒たち 右:8mのプールに浮上してきたトリトン2号)
また、「無響室」という、発生した音が、まったく反射せず完全に吸収される部屋は、前後左右上下6方向からのスピーカにより、コンサートホール、駅や空港、トンネル内部などの音響環境の改善の研究に用いられているとのことでした。大学生によるクラリネット演奏も、再現するホールによってまったく響き方が違うことを、感心した表情で聞き分けていました。
(左:不気味なほど反響しない無響室にて 右:自らの進路に思いを巡らせ凛々しい顔つきに)
途中、1時間程度の自由見学では各自の興味に従って、キャンパス内を見学して回りました。鉄道のホームドアが移動するシステムを見学したり、風洞実験設備で秒速20mを体感したりと、それぞれに日本トップレベルの研究を体感していました。
■先輩との懇談
後半では、本校卒業生で現役東大に合格・入学を果たしたばかりの太田君や、名古屋大学を卒業した社会人などが駆けつけて、生徒たちの見学に同行してくださいました。最後の懇談での激励コメントを紹介します。
*先輩のコメント
「説明にはわからないことも多かったかもしれないが、こうやって大学の施設を見学できるだけでラッキーなこと。いずれ決めることになる自分の進路に対しても真剣に向き合ってみて欲しい。」
「社会人になったら『文系だからわからない』というのは通用せず、『勉強しなさい』ということになる。」
「受験を終えてみて、自分にとって受験とは自信をつけるためのものでもあったと思う。受験ぐらいでつまずいている場合ではない。多少大変でも、努力してみることで可能性が開けてくる。是非頑張りきって欲しい。」
「学校の企画がなくても自分たちでどんどん出かけてみて欲しい。」
*生徒たちの感想
「わからない説明も多かったが、それでも面白そうと思えることが多かった。これから知識を増やして、わかるようになりたい。」
「文系といえども、広い視野をもって多くの勉強に積極的に取り組んでいきたい。私立大学を志望していたが、国立大学も考えてみたいと思い始めた。」
「少しの工夫を加えると便利になるものがあることを体感できた。こういう理系的な面白さを発見するべく、少し違った見方で身の回りを眺めてみたい。」「理系・文系関係なく楽しめた。学問の裾野の広さに驚いた。」
「高1から受験勉強を始めて、やっぱり東大に行きたいと思った。」
東北大学・宮城教育大学 キャンパスレポート
浜田 肇(数学科)
動員数5万人で全国3位(1位は日本大学、2位は早稲田大学、4位は明治大学)という東北大学のオープンキャンパスに、高1生徒2名と一緒に参加しました。
「実学主義」「就職に強い」という噂だけしか知らず、遠いところにあるとばかり考えていた私には、驚きと発見の連続でした。
東北大学(工学部・理学部・薬学部)は仙台駅より通常はバスで30分程度の青葉山に位置します。東京-仙台間は新幹線で1時間半ですので日帰りも十分可能で、実際に7月30日は生徒2名が日帰りで参加しました。
何より驚いたのは動員数5万人の実態と、大学をあげたオープンキャンパスへの力の入れようです。
当日は仙台駅よりタクシーを利用しましたが、裏道を通ったにもかかわらず大渋滞が発生していて、1時間以上を要しました。遠回りを疑ってしまうほどでしたが、大学で続々と到着する大型バスを見て、納得しました。東北6県から高校生が学校単位で見学に訪れているのです。仙台駅前が高校生でごった返していたのも思い出されました。
大学で次に目についたのは、学科ごとに揃いのオリジナルTシャツを着た学生たちです。高校生を見つけては、自分たちの発表ブースに引っ張り込み、熱心に説明していました。この姿勢は教授クラスにおいても例外ではなく、看板研究者が30分~50分のミニ講義(模擬講義、体験講義、公開講義、オープン講義等呼び名が統一されないのも国立大学らしい?)に惜しげもなく登壇し、その数は大学全体で57にも上るのです。この期間の大学の研究・教育活動は一切停止してしまうほどの熱の入れようには、単に入学者確保以上のものがあることに、あとになってから気づきました。つまり、研究は得てして狭い世界の中でのみ、考え方を煮詰めていく作業になりがちです。関連する分野の研究者には内容を伝えられるけれど、それが社会全体に対してどういう役割を持つのかという点は問われないケースもあります。年に一度の開かれた場で、学生自身が高校生を相手にすることで、自らがたどってきた道を振り返り、学問そのものがもつ面白さを確認するまたとない機会となっているのです。教授たちも、「近頃の学生は勉強しなくなった」などと嘆くばかりではなく、「全くの素人である高校生にいかに面白さを伝えるか」を、社会に対して発表する場として与えられていることになるのです。実学主義を掲げる大学が、アウトプット能力をも高めるイベントとして積極的に活用していることが窺えました。「発明工房」と題された小学生向けのイベント会場も用意され、学問が、研究者だけのものでないことを大学一丸となって確認しようとしていることが随所に感じられました。
参加した生徒の感想を紹介します。
堀江君:
「時間に余裕のある1年生のうちに地方大学を見学しておきたかったので参加を決意しました。工学部という名前だけからはなかなかイメージができませんでしたが、大学生がフレンドリーに話しかけてくれていろいろな情報を得ることができました。僕自身は土木工学科に最も興味を持ちました。全国各地から高校生が見学に来ていて、東北大学の規模の大きさに驚きました。自然もとても多く、充実した大学生活を送るのにとてもいい環境だと思いました。」
古関君:
「薬学部に興味があり、参加しました。レベルがとても高いことは、よく知っていたけれど、それに見合うだけの魅力があることを感じました。特にミニ講義では、薬が効く仕組みを説明してもらい、興味が深まりました。同じ4年間を過ごすならこういう環境に身を置けるよう、これから頑張って勉強したいと思いました。同じ高校生たちが積極的に質問する姿も見ることができ、学ぶことの多い1日になりました。」
たった1日の見学でしたが、2人の目つきや言葉遣いまで、積極性が明らかに増した充実のイベントとなりました。
*三浦英夫教授(機械知能・航空工学科学科長) ミニ講義挨拶
・敷地内の一番目立つところに展示してある発電所のタービンは、火力発電所内のガスタービン国産技術100%の第1号で、解体の際に寄贈された。
・世界大学ランキングは180位であるが、工学部としては20位。当然日本では1位。
・特許出願件数日本1位
*吉田和哉教授(機械知能・航空工学科)「宇宙を探査するロボットを作っています」
・『宇宙兄弟』というコミックに登場するもろもろのエピソードのかなりの部分は実際に吉田研究室における取材をもとにしたものであるとのこと。
・ネバダ州の砂漠で毎年ロケット打ち上げを、個人で行っている人がいるので共同して実験をおこなっている。
・実際に砂丘にロボットを持ち出して、歩行の動作実験をする。
*堀切川一男教授(機械知能・航空工学科)「ドクターホッキーのすべらない話」
・摩擦学におけるチャートを考案し、世界的な第一人者。
・摩擦に関係することは、ボブスレー日本代表チーム強化のための研究、イチローのスパイク開発、パンタグラフの開発、潤滑油の要らない金属接触面の開発など。
・摩擦とは別の面では、あらゆる車椅子に装着可能な電動化ユニット開発、問題解決チャートの提案、福島観光大使など。
・最も時間を割いていたのは、「恋愛マップ」なる人間関係に関するパス図。
・特許を量産している研究者。
*小菅一弘教授(機械知能・航空工学科)「ロボットが拓く未来」
・左右の手や、複数でものを運ぶなど「協調・協働」はロボットにとって難しかった。これをクリアすることで、乗り捨てた車のタイヤを持ち上げ、駐車スペースに格納するロボットの開発に成功した。
・協調・協働をさらに発展させ、人に合わせてダンスを踊るロボットを開発した。これは、肢体不自由者の歩行を補助するロボットにつながり、脚に障碍を持つ人が歩けるようになった例もある。
*岡崎直観准教授(情報知能システム総合学科・)「言葉を操る賢いコンピュータはどこまで実現したか」
・「友達と仙台に行きました」「盛岡と仙台に行きました」の「と」は全く意味が違う。これをコンピュータで翻訳するには大きな困難が伴う。ネット上の膨大な使用パターンを分析することで、こうした区別の制度が大幅に上がっている。
・情報の信憑性をどう確保するかに関する研究について。ツイッター上でデマの発生から、事実が認識されるまでの、デマと事実の双方の発言数の推移を分析し、これらに一般的なパターンがあることが確認された。さらに踏み込んで、デマを自動的に発見するプログラムの開発も成功した。
・選挙における候補者の話題と、投票者の話題のギャップの解析にも成功した。
*斉木功准教授(建築・社会環境工学科)「橋の構造に隠された秘密」
・同じ原材料を用いても形の違いによって、強度が大きく違うことがわかっている。
・たわみに耐えることができる設計と、そもそもたわまないようにする設計を使い分けることが重要である。
これからオープンキャンパスに出かける高校生にぜひお伝えしたいことがあります。
ミニ講義をぜひ体験してください!!
堀切川教授は「涙なくしては語れない」と所々で冗談交じりに話していました。
実際に研究活動というのは失敗や、前進できないことの連続です。
それでも、目標が描けて、ときどきは大きくうまくいく、だからやめられないのです。
大学進学の先にある就職が気になって、大学選び・学部選びに迷うこともあるでしょう。
しかし、より重要なのは大学生活・研究生活を充実させることではないでしょうか。
たくさんの失敗を、思い切り没頭して生活することの大切さを、今回のオープンキャンパスで痛感しました。
その結果が、就職率100%、求人倍率5倍という圧倒的な結果につながっていると確認できて改めて勇気をもらえました。
全学共通利用のスパコン棟内部。
大震災で施設がかなり破損したとのことで、随所にクレーンが見られる。
宮城教育大学
どの施設もコンパクトな大学で、高校のような雰囲気でした。行き交う学生たちもほとんどが顔見知りのようで、本校卒業生の大井君に大学を案内してもらっている間も、すれ違う学生の大半と言葉を交わしていました。
彼は、「ほぼ全員が教職を目指すという共通意識も、この落ち着いた雰囲気の理由です」と話してくれました。東北大学に隣接しており、聴講や単位の振り替えや、講義担当教官の交流も盛んなようです。卒業単位満了が見えてきたら東北大学の講義ばかり、という学生もいるようです。
「出願直前までよく知らなかった大学ですが、入学して本当に良かったと思います。浪人を覚悟していたときにこの大学を見つけてくれた高校の先生には感謝しています。後輩たちにも最後までがんばりきってほしいと思います。」とメッセージをもらいました。
昼休みにはほとんどすべての学生が学食に集まる。グループで行動する学生が目立つ。
学内で最大の講義室(200名弱収容)。コンパクトがゆえに、学生同士も濃密なつながりを形成する。
充実のキャンパスライフを送る本校卒業生大井君と。
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7月18日、京都大学で行われたWCVに高2生3名、高1生1名が参加しました。
WCVはこのHPでも度々生徒の参加状況を報告している企画ですが、国立大学、それも都内以外の大学は初めての実施ということで貴重な機会を得ました。『ウェブで学ぶ』(ちくま新書)などで有名な飯吉透教授の「オープンエデュケーション入門」の講義を受講するというのがメインの企画で、前後のスクーリングのコーディネーターは本校ではおなじみの倉部史記さん。
参加させていただいた講義は「ポケットゼミ」と呼ばれる大学一年生の少人数ゼミナールで、男子学生6名と女子学生3名、そしてTAの大学院生1名、お手伝いの4回生1名という濃密なメンバーで行われました。参加制との自己紹介の時間も与えていただき、本校生徒の1人は「京大生がどれだけハイクオリティかを見てみたいです」と大胆なことを言っていました。
授業は和やかな雰囲気の中で進められ、参加生徒たちもしっかりとついていっていたようです。オープンエデュケーションの出現で、「知の占有」が「誰でも受発信」に時代になったことは革命的であるということが様々な形で具体的に示され、それについて討議をするという展開でした。お土産にいただいた先生のご著書『ウェブで学ぶーオープンエデュケーションと知の革命ー』(ちくま新書)は、是非夏休みに熟読してもらいたいものです。
学食での昼食時にはポケゼミの学生が何名かが帯同してくださり、カフェテラスで京大の生活についての話が聞けるというなんとも贅沢なひととき。
午後の振り返りでは4回生の方やTAの方に加えて飯吉教授も会議の合間を縫ってご登場になり、ご自分のまさに紆余曲折のご経験をお話しながら、「何とかなるよ」と生徒たちを笑顔で励ましてくださいました。
京大のキャンパスを歩きながら生徒に感想を尋ねてみると、「京大、本当にいいですねえ」「来てよかったです」「自由な雰囲気が素晴らしい」と感動の声ばかり。わざわざ遠方から駆けつけた甲斐があったようです。
帰りには祇園近くの石塀小路を抜けて甘味処で涼を取るという、まさに京都らしい夕暮れ時を過ごしました。
WVCの企画をしてくださったNEWVWRYさんや、倉部さん、そして何より京大の飯吉教授、ポケゼミの皆様にはこの場を借りて感謝申し上げます。
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【立教大学経営学部WCV】
4月29日、昨年度からNPO法人NEWVERYが実施している「WEEKDAY CAMPUS VISIT(WCV)」に、本校の生徒が参加してきました(前回の記事はこちら)。今回は高校2年生の飯田君、永田君、竹中君の3名が立教大学経営学部の通常の授業に参加させてもらいましたが、大いに刺激を受けてきたようです。今回の「キャンパス・レポート」は3人のインタビューを元に構成しました。
当日は授業の前に企画の趣旨説明やアンケートが行われた後、1年生の必修授業である経営学入門の講義に参加。ユニクロの話題など身近な題材を取り上げた授業でとても分かりやすかったそうです。
昼休み、学食で食べる昼食は安い上にとても美味しかったということでした。
その後はキャンパス調査ということで、学年、学校分かれて各班でテーマを決めて学生や教授に質問する時間がありました。
インタビューを終えてみて3人はこんな風に語ってくれました。
「内部進学生はおっとりしてる感じでした。チャラいイメージだったんですが(笑)意外に真面目でした」(永田君)
「思ったほど国際色が強いわけではなく、キャンパスでは積極的にならないと外国人との交流はないかもしれませんね。インタビューを通して、て他の学校の意識の高い人たちと話すのも面白かった」(飯田)
「立教大学のいいところ、悪いところなどをインタビューしましたが、少人数制で学生とのコミュニケーションが取りやすいというのは実際に話してみてもそう感じました」(竹中)
中央大学は本校から毎年10名以上の生徒が入学する、関係の深い大学です。入学の仕方も一般入試はもちろん指定校推薦や公募推薦など、多様な入試で多くの生徒がお世話になってきました。
毎年行われている中央大学の説明会に出席した折りに在校生にも会ってきました。今春高校を卒業し、一般入試を経て中央大学の商学部に入学した山川君と学食の前で待ち合わせをし、一緒に昼食を食べようと思っていたところ、二年前の卒業生の小林君が「先生!お久しぶりです!」と声をかけてくるではありませんか。小林君はアメフトで関東大会に出場した後、受験勉強に取り組み見事に現役合格した生徒です。なんという偶然。いや、多くの生徒が中央大学にお世話になっている何よりの証拠でしょう。小林君は現役の時と同じように多くの友人と楽しそうに談笑していました。高校時代と違っていたのは、その輪の中に女子学生もいるということでしょうか。
さて、山川君とも会うことができたので昼食を食べながら学校生活について聞いてみました。高校時代サッカー部だった山川君は大学では運動のサークルに入らず、学園祭の実行委員をやっているそうです。実行委員になりたい学生は多いらしく、100名もの応募者の中から選ばれたということでした。ちょうど鈴木おさむ氏の講演のポスターを貼ったばかりということで早速宣伝をしていました。授業にも積極的で、その日も夕方まで授業だったそうです。
中央大学は佼成学園からはやや離れた多摩地区に位置しているため、その距離にめげてしまい受験を断念するケースが見られますが、マンモス大学とは思えないほど面倒見のいい教育をしているようです。職員の方も実に親切で学生の状況把握に努めていらっしゃいます。キャンパスを都心回帰にするところが増えていますが、ビルのような大学ばかりではなく、緑あふれるところに多くの学生が集う郊外キャンパスの魅力はまだまだ捨てがたいと思います。
山川君を始め、多くの卒業生が充実した学生生活を送っていると聞きました。今回は時間の関係であまり多くの場所を回ることができませんでしたが、中央大学のキャンパスレポートは今後第二弾、第三弾と続けていきたいと思います。
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三月中旬の札幌はまだ春にはほど遠く、時折雪が舞うような寒さでした。
今回のキャンパスレポートは2009年度の卒業生、黒沼君が学ぶ北海道大学です。黒沼君は佼成学園在学中には生徒会長も務めるかたわら、文化祭では見事なピアノ演奏を披露するなどマルチな才能を発揮した俊英ですが、訪問したその日は奇しくも黒沼君が生徒会長のバトンを渡した元生徒会長が東京大学に合格したという一報を受けたばかりの日でした。
北海道大学は日本で五番目に設立された帝国大学を前身とする総合大学で、学部の構成も以下の通り、実にバラエティに富んでいます。
【文学部・法学部・経済学部・医学部・歯学部・工学部・獣医学部・水産学部・理学部・薬学部・農学部・教育学部】
黒沼君が所属するのは水産学部という北大ならではの学部で、キャンパスは一年の前期までが札幌、その後函館に移ることになります。もともとはペンギンの研究に興味を抱いて北大で学ぶことを志したのですが、現在では食品関係の研究に関心を持つようになり、人気の資源機能化学科を選択したそうです。この春から三年生になる黒沼君は現在函館在住にもかかわらず、大学に入学してから始めたアメリカンフットボール部の活動を続けている関係で、週末は札幌に来ているのです。そのため、今回の訪問ではじっくりと札幌キャンパスを案内してもらうことができました。
黒沼君の話によれば北海道大学は実に学びの環境の整った大学で、居心地がいいそうです。学生は道内がやや多いようですが、伝統的な寮もあることから地方色も豊かで様々な出会いに恵まれるといいます。黒沼君は料理の腕前も達者なので寮には入らず一人暮らしを満喫しているそうですが、学校の勉強と体育会アメフトの活動で多忙な毎日を送っているようです。
キャンパスはまだ雪が降り積もった状態で、通常の授業が行われている時とはだいぶ異なりますが、ところどころ耳慣れない言葉が入ってきます。キャンパス内の広いスペースを指して、
「今は雪が積もってますけど、ここでジンパをやるんですよ」
「ジンパ?」
「あ、ジンギスカンパーティーのことです。新歓の時期になるとこのあたりではみんなジンパやってます」
このあたりも東京都は違ってなかなか味わい深いものがあります。「この池の周りでデートしたカップルは別れるらしいです」などという、ちょっとしたローカル都市伝説も教えてくれました。地方の大学生活は生活そのものがキャンパスの中にあるものと改めて実感しました。
そして有名なポプラ並木は大学キャンパス内とは思えないほど雄壮な自然そのもので、雪を戴いた見事な光景には思わず息を呑みました。並木道の先には広大な農場が広がっており、一つの大学の敷地とは思えないほどです。訪問当日は昼過ぎまで後期試験が行われていた日だけあって記念撮影をしている高校生の姿も見受けられ、全国区の大学の魅力を実感しました。
黒沼君に三年生になってからの展望を尋ねたところ、大学院進学や留学を視野に入れつつ、就職についても考えていきたいということでした。函館キャンパスの水産学部から、札幌キャンパスの農学部の大学院に進学するケースもしばしばあるらしく、勉強についても充分怠りなく進めているそうです。
北海道大学は入試形態も「総合入試」という枠を拡大しており、大学入学後に自分の専門分野を決定していく、いわゆる東大のような「進振り」を進めています。漠然とした憧れをもって北海道の地に学びの可能性を求めてみれば、自分でも思いもしなかったような素晴らしい展開が待ち受けているかもしれません。どこまでも奥深い北海道大学の魅力の一端を語ってくれた黒沼君は、こんなことを言っていました。
「北大は自分がやれることが広がる本当に良い大学ですから佼成学園の後輩たちにも是非勧めて下さい!」
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近年グローバル化の流れは大学にも押し寄せ、多くの大学が「国際系」学部を作ったり、英語のみで行う授業を必修にしたりと、90年代初頭に起こった「国際関係学部ブーム」とは違った形で、もっと本格的な形でグローバルスタンダードを目指す大学の改組が行われている。そして数ある「国際系大学」「国際系学部」の中でひときわ異彩を放つ大学、「立命館アジア太平洋大学」が大分に出来たのは、今から10年ほど前のことだった。
世界中の人のために作った大学
数ある「国際系」大学との違いを尋ねると、「他の大学は日本人が日本人のために作った大学ですが、本学は世界中の人のために作った大学です」と答えてくれたのは、立命館アジア太平洋大学(通称APU)のアドミッションズオフィスの伊藤さんだった。現在、注目を集めている異色の大学APUとはどんな大学なのだろうか。進路指導部のキャンパスレポートの一環として遠く大分まで訪れ、その実態を探りに行った。
今回の視察の目的はもう一つ。今春の卒業生226名のうち、なんと4名がこの大学に進学したのである。東京の私立高校の学生が大分にある大学、しかも学生の半数が留学生というあまりにも個性的な大学に通うことになったのも何かの縁かもしれない。今春の卒業生たちの学年主任でもあった関根と在校生たちとの再会という、ちょっとしたイベントをレポートしてみたい。
APUの場所
大分空港から車で30分ほどかかる高台に別府湾が一望できるところにキャンパスは位置していた。2000年開校ということで校舎はまだ新しく、瀟洒な煉瓦造りの外壁と緑がほどよく調和した空間には時折、強いけれども心地の良い風が吹き抜けていた。自然に囲まれたキャンパスの周囲には何もなく大学そのものが一つの「世界」といった風情だ。学生たちはキャンパスから遙かに見下ろせる別府の街を「下界」と呼んでいたが、まさしくそのくらい「世間」とは隔絶した場所にあった。
APハウス
APUの学生の中にはAPハウスと呼ばれる学生寮に入る学生も少なくない。原則として1年次だけということだが、シェアルームは必ず「国内生」と「国際生」(留学生)がペアになり、最も生きた形での異文化コミュニケーションの場となるようだ。本校の卒業生のうち、2名がAPハウスに入寮(倍率は3倍程度で、学力試験などによって優先順位が決まる)している。80カ国以上の学生が暮らす寮だけあって、食事時には様々な国のスパイシーな香りが建物いっぱいに広がるらしい。残念ながら食事時に訪れたわけではないのでその香りを体験することはできなかった。
授業
授業はかなりユニークだ。国際生にとっては何を学ぶにしてもまずは日本語の能力を上げていかなければならないので、相当の勉強が必要だという。私たちが見学した講義では来日して二ヶ月足らずの学生が早くも基本動詞の活用などを使いこなしていたことに舌を巻いた。帽子をかぶり、時折ペットボトルの飲み物を飲みながらという自由な気風の中で、真剣に日本語を身につけようとする国際生の能力の高さを感じた。
また、もう一つの授業はパワーポイントとプリントを用いて、ある言語とその概念を結びつけるためにテキストを読みながら真剣に考えるという場面だったが、教室は緊張感がみなぎっていた。
図書館
開学当初は割と平凡な図書館だったらしい。それが、学生の利用が少ないから何とかしてほしいという要望に応えて大きく改善をし、魅力的な空間に生まれ変わったという。なるほど、静かに自習する空間は「集中の森」、学生がコミュニケーションを取る場所は「語らいの海」など、洒落たネーミングを施し、ガラス張りのオープンスペースが開放的な空間を演出している。また、それぞれのゾーンにはイメージに合った色のカーペットを敷かれるという念の入れようだ。学校の個性は図書館を見れば分かる。
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学食
APUの学食は「本場の味」が楽しめる。グリーンカレーやタコライスなどがあるだけでもAPUらしいと思ったが、それ以上に印象的だったのが「味」。東京のアジアンレストランなどで食べるよりも本格的に作られていて、ホントに辛かった(笑)。そのレシピで作ったカレーが好評だということで、レトルトでも学内で販売していた。
在学生との懇談
大学見学のプログラムには在学生との懇談の時間も組まれていた。私たちは2組、8名の学生たちととじっくり話をすることができた。私の隣に座ったのは、バングラディッシュ出身の4年生の男子学生。日本語の見事さもさることながら、それ以上に、日本の大学にやってきた目的や将来の展望などを明快に答えてくれたことにも驚いた。就職活動について聞いたところ、既にインテルやNECに内定を取っているそうで、グローバルな人材獲得競争が行われている様子がよくわかった。また、5カ国語を話せるというベトナム出身の女子学生は、フィンランドの学校とオーストラリアの学校を考えつつ、最終的にAPUに決めたという。大学選びも世界中からというのがグローバルスタンダードということか。
本校卒業生との再会
卒業生のうち1名はアメリカンフットボール部の出身で、その活動実績と高い目的意識を持ってAO入試で合格していた。大学の合格が決まってからは遊んでしまうというのが相場だが、彼は合格してからの方がむしろ自習室などに通って懸命に語学の勉強をしていたほどだ。あとの3人はセンター試験や一般入試で合格し、縁あって入学することにした。1人はなんと「センター得意教科型」で現代文と社会を使っての合格、つまりこれほど国際色豊かな大学に英語を使わないで入学したのだ。アドミッションポリシーでもある「大切なのは英語力よりも目的意識や学習意欲」という姿勢がこんなところにも生きている。
卒業してからまだ二ヶ月程度しか経っていないものの、関根元学年主任は彼らとの再会にすっかり目を細めていた。「土日は何をやって過ごしているの?」という問いかけに、「宿題やってますよ。毎週2000字以上も書くんですから大変ですよ」と言いながら、書いたレポートを見せてくれた。「どれどれ」と覗き込む関根元主任は、教え子たちが遠く離れた全く異なる環境の中、短期間で大きく成長している様子が嬉しくて仕方がないようだ。大学での生活はまだ始まったばかりで、手探りの部分も多いようだ。けれども、様々な国の文化を間近で体験しながら、真剣に勉強に取り組んでいる様子は見て取れた。彼らがこの場所で本気で学べば、どの大学に行くよりもかけがえのない財産を得るであろうことを確信した。
終わりに
大学生活というのはややもすれば「予定調和」で終わってしまいがちだ。普通に授業を受けて、サークルとバイトに明け暮れ、3年の終わりには就職活動をするという具合に。APUという大学ではこうした予定調和的な大学生活は存在しない。学ぶ主体の意欲によって、思ってもいなかったような場所に行き、想像もできないようなことを経験し、世界中に知己を得ることも可能である。
ある国内生はこんなことを言っていた。「APUでは『変わっている』ってことが価値なんですよ」
「世界に一番近い大学」、いや、「大学の中に世界がある」という「変わっている大学」の見学は非常に刺激的だった。案内をしてくれたAPUのスタッフの方や学生さんたちには御礼申し上げたい。卒業生の諸君の今後の活躍も心から祈っている。
文責 進路指導部主任 西村準吉
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進路指導部主任 西村準吉
オープンキャンパス
9月19日(日)。秋田駅から車で30分ほどのひっそりとした場所にある公立大学、国際教養大学のオープンキャンパスが小雨の降る中開催された。秋田県がミネソタ州立大学秋田校の跡地を買い取って、海外の大学の教授や東京外国語大学学長などを歴任した中嶋嶺雄学長を招聘し、「これまでの日本には存在しないグローバル・スタンダードの大学を創り、世界に挑戦するという決意」(学長メッセージより)で、数年にわたる協議を重ねた末2004年に開学した。独創的な理念と斬新なカリキュラムが評判となり、近年では全国で最も注目を集める大学の一つにまでなった。
国際基督教大学(ICU)、立命館アジア太平洋大学(APU)、早稲田大学国際教養学部と並んで、国際教育の担い手として圧倒的な存在感を示している国際教養大学(AIU)とはいったいどんな大学なのか。佼成学園進路指導部webのキャンパスレポートの記念すべき第1回として、その魅力の一端に迫ってみたい。当日は、かねてからAIUに高い関心を寄せている高3の生徒1名と高2の生徒1名が東京から参加した。また、私の中学・高校の同級でもある倉科一希准教授にご案内をしていただいた。
国際教養大学の魅力
国際教養大学の魅力を挙げればきりはないが、
「新入生は一年間の寮生活」
「卒業までに一年間の海外留学を義務化」
「全ての授業が英語で行われる」
「24時間開館の図書館」
という点についてここでは触れておきたい。
AIUのオープンキャンパスでは学生がピンク色のTシャツを着てスタッフとして案内をしてくれる。もちろん日本人だけでなく様々な国の学生たちだ。「国際教養大学を全国に広め隊」という有志の一団が、学生生活について懇切丁寧にレクチャーしている。その語り口は愛校心に溢れ、非常に熱がこもっている。留学体験コーナーにも多くの留学帰りの学生がその魅力について存分に語ってくれる。そう、AIUでは学生そのものが最大の広告塔なのだ。自分の体験してきたことを語るのだから、これ以上に説得力があるものはない。参加した生徒も興味深そうに様々な質問を投げかけていた。
授業は全て英語
英語で行われる模擬授業にも参加した。「日本では90%以上の大学が日本人が日本語で日本人に教えているという形態だが、グローバル社会ではそれは限界にきている」(学長メッセージ)というように、AIUでは教授たちも全ての会議を英語で行っているほどの徹底ぶりである。今回の模擬授業では、20~30名ほどの教室はどの講座も満員で意欲あふれる高校生が英語での授業に聞き入っていた。それだけではなく、一見したところ普通の女の子に見える高校生が自ら挙手して流暢な英語で受け答えをする姿には、未来の大学像が予感された。本校から参加した二人も懸命に授業についていっていたようだ。
見たことのないような図書館
圧巻だったのは図書館である。写真でも分かるように、秋田杉という温かみのある素材を活かして、扇形にゆったりと広がる図書館は日本のどの大学の図書館にも似ていない。開学6年ということもあって蔵書はまだまだ増えると言うことだが、諸外国の文献がこれほど見事に開架されている様子に、本校の生徒も思わず息をのんでいた。中嶋学長によれば、図書館を24時間開館にすることは絶対に譲れない一線だったという。「コンビニだって24時間営業なのに、なんで図書館が24時間開館できないんだ」という一言が印象的だった。防犯上の理由などからなかなか認可が下りなかったが、粘り強く交渉した末に認めてもらい、実際に問題は起こっていないらしい。
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高い就職率の秘密
就職率は開学以来100%。今年度もすでに94%だというAIUの驚異的な数字には舌を巻くばかりだが、就職課に立ち寄る機会があったのでそこで就職の実態について疑問をぶつけてみた。
「これだけ不況が続く中、秋田という東京から離れた場所で就活に不利はないんですか?」
「いいえ、本学では多くの企業が大学まで足を運んでセミナーを開催しています。だから、そうした不利はないですよ」
なるほど真の教育を追求していれば人材は確実に育ち、自ずと評価が高まるということのようだ。
午後には倉科准教授の取り計らいで中嶋学長にお会いすることができた。実を言うと中嶋学長は、私と倉科准教授の高校の大先輩にあたる方なのである。そうした縁もあって、お話をうかがうことができたのだが、そのときに印象的なことをおっしゃっていた。
「本学は幸いこんなご時世でも企業からの評価が高く、就職率100%を続けているけれど、就職のために本学を選ぶとしたらそれは本末転倒だ。就職はあくまで結果としてついてくることであって、本学の理念に共感して入学してくれなければ。最近では入学者の水準も上がってきたようで嬉しい面もあるけれど、そうした受験勉強の秀才が増えてしまうのはあまりよくない。もっと荒削りでも意欲のある学生にどんどん挑戦してもらいたい」
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学長メッセージ
学長メッセージでは、「知の鎖国」を打破するということを力説されていたように、知の世界のグローバルスタンダードに参入するには小手先の技術や浅薄な海外への憧憬では通用しないようだ。そういえば倉科准教授もこんなことをおっしゃっていた。
「本学では、英語だけができる学生は最初のうちは確かにリードしているけれど、英語は入学してからでも勉強できるので、2年、3年と経過していくうちに英語だけができる学生は置いていかれ、もっと幅広く学ぶ姿勢がある学生が頭角を現すのです」
参加生徒の様子
本校から参加した生徒は、私が事務職員と話しているといつの間にかAIUの留学生と仲良くなっていたり、留学体験コーナーに自ら足を運んでいた。どうやら大いに刺激を受けたようだ。進路指導部主任という役職上、様々な大学を回ることが多いけれども、国際教養大学ほど刺激に満ちた大学はなかなか見つからない。確かに場所の問題や、「国際教育」という単科という点で、誰もが目指す大学ではないだろう。しかし、確実にそこ目指す「誰か」は存在しており、それは年々増えていくことだろう。日本の大学観を見直すときが来ているようだ。授業の枕となる雑談でこの視察について話したところ、予想以上に生徒が関心を示していたのも印象的である。
最後になるが、中嶋学長を始め、倉科准教授や国際教養大学のスタッフの皆さんに感謝したい。(了)
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